障害者の権利条約特別委員会の総括所見

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2022年9月9日、国連の障害者の権利条約特別委員会から日本に対して総括所見が出された。特に、教育に関する部分では、障害のある子どもが通常の学級での学びに参加しにくいことが指摘された。この指摘には、特別支援学級が設置されていることが通常の学級との分離につながることも含まれていた。

この4月には、文部科学省より「特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)(4文科初第375号 )」が全国の教育委員会等に発出された。この中では、大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学び、特別支援学級において障害の状態や特性及び心身の発達の段階等に応じた指導を十分に受けていない事例があるとして、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供する必要性を指摘している。大半の時間を交流及び共同学習として通常の学級で学んでいる場合には、学びの場を検討するべきであるとの言及もある。こうして、多様で柔軟な仕組みの整備を進めるというのが文部科学省のスタンスだった。

しかし、障害者の権利条約特別委員会は、この通知を懸念材料として取り上げた。その上で、日本に対する要請として、通知の撤回、障害のあるすべての子どもが通常の学級での学びに参加しやすい状況をつくること、特に通常の学級での学びを「拒否してはいけない」ことを明文化するように指摘した。

わが国では、インクルーシブ教育システム構築のために、特別支援教育を推進するとうたってきた。しかし、障害者の権利条約特別委員会の指摘は、そのような国策に転換を迫る内容といえるものだった。障害者の権利条約特別委員会の要請には、質の高いインクルーシブ教育に関する国としての行動計画を立てることが言及されている。現状より一層「質の高い」インクルーシブ教育とは何か、どのようにわが国でそれを具体化するのか、今後の議論が待たれるところである。

 

参考:

Committee on the Rights of Persons with Disabilities Twenty-seventh session (2022). Concluding observations on the initial report of Japan.

特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)(4文科初第375号 )https://www.mext.go.jp/content/20220428-mxt_tokubetu01-100002908_1.pdf

 

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